被害者の素因を評価
精神的または肉体的に並外れて弱いため、普通の人ではそこまでならないほど被害が拡大することがありえます。
本当にそうなら、その損害をすべて被害者に負わせるのは公正ではない。
だから、何割か割り引こうというのが素因減額です。
素因は、被害者の精神的傾向である「心因的要因」と、既往の疾患や身体的特徴などの「体質的・身体的素因」に分類されています。
事例は主に「赤本(※)」から抜粋しているので、正確な情報が必要な場合は原本を参照してください。
※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」 弁護士が賠償請求額を決める時に使うバイブル
心因的要因
赤本に判例は数例しか載っていませんでした。
これが争点になることは少ないようです。
確かに並外れて精神が弱いとか、クレーマー気質だとか、客観的に証明するのも難しいし、そんなことを申し立てれば社会問題になりかねません。
よほど非常識な行動を取らない限り、これで減額を申立てられる可能性は小さいのではないかと思います。
- 首の症状で10年以上も入通院を繰り返した患者。特異な性格と言動。医師もそれに影響されて非常識な診断を下した可能性。4割減額。
- 1年2カ月の治療後に身体表現性障害を発症。社会的ストレスが原因の可能性もあるが、あくまで可能性に留まるとして減額を否定。
体質的・身体的素因
既往症がある場合など、客観的証拠もあることだし、問題になりやすいようです。
しかし、赤本に載っていたのは素因減額を認めなかった例ばかりでした。
人の体の状態は千差万別なのだから、そういうことを認め出すと交通事故被害者救済が成立しないということなのだと思います。
だから加害者がこれを申し立ててきたら、担当弁護士に断固戦ってもらいましょう。
- 首が平均より長いために頸椎不安定症がひどくなったので素因減額すべきという主張を却下。
- 右大腿骨骨折の62歳の主婦。骨密度は低下していたが、骨粗しょう症というほどでもないとして減額を否定。
- 糖尿病・高血圧の既往症のある男性。その影響は多少あったとしても事故の激しさに比べれば軽微として減額を否定。
- 7カ月の治療後に腰痛で14級の男性。4~5年前から腰痛の既往症があるが、そのせいではないとして減額を却下。