基礎収入額以外のファクターも押さえる
ここでは、死亡逸失利益に関して基礎収入額以外のファクターをまとめています。
具体的には、生活費控除率、税金の控除、就労可能年数、中間利息控除、幼児の養育費、扶養利益喪失などです。
事例は主に「赤本(※)」から抜粋しているので、正確な情報が必要な場合は原本を参照してください。
※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」 弁護士が賠償請求額を決める時に使うバイブル
生活費控除率
一家の支柱 |
被扶養者1人の場合: 40% |
---|---|
女性 |
30%。(主婦、独身、幼児を含む。) |
男性 | 50%。(主婦、独身、幼児を含む。) |
上表が基本ですが、事情により修正が加えられます。
- 妻と二人暮らしで40%が基本だが、別居中の高齢の養母に相応の不要が必要だったとして35%とした例。m
- 男子大学生で基本は50%。しかし、父は他界しており、卒業後は母を扶養する予定だったとして40%を採用。
- 独身で両親と同居していたタクシー運転手。収入をすべて生活費として家に入れ、身障者である母親の介護に中心的役割を果たしていた。一家の支柱と認め、50%ではなく40%を採用。
税金の控除
実際に収入があった場合、所得税をはじめ税を払う可能性があり、その分は手元に残りません。
特に収入が高額な場合は、所得税や地方税に相当の額が発生するのは明白です。
そこで、これを控除するのかしないのかが問題になりえます。
結論から言うと、税金は原則として控除しないことになっています。
就労可能年数
就労可能年数は原則67歳です。
死亡した被害者が67歳以上だった場合、簡易生命表の平均余命の1/2とします。
67歳までの年数が平均余命の1/2より短くなる人については、平均余命の1/2を採用します。
未就学者の就労始期は原則18歳ですが、大学進学を前提とする場合は大学卒業予定時とします。
年金の逸失利益を計算する場合は、平均余命とします。
以上が原則ルールで、あとは事情に応じた修正がかけられる場合があります。
- 筝曲師範、開業医について70歳まで稼働可能とした例。
- 62歳旋盤工。定年のない給与所得者と捉え、平均余命の1/2の72歳とした。
- 税理士。事務員に大きく依存できるので、他の職種より長く働けると考え、75歳とした。
中間利息控除
利率は5%という結論になっています。(平成17年の最高裁判決)
銀行利子が0%に近いこのご時世、5%で安全な運用先など皆無なので遺族としては納得いかないかもしれません。
しかし、保険金支払いの遅延利息と揃えておかねばならないという事情もあり、こういう結論になっているのです。
だから、ここを争ってもまずムダです。
また、利息計算には単利(ホフマン式)と複利(ライプニッツ式)があります。
逸失利益を受け取る側にとってはライプニッツ式の方が圧倒的に不利です。
しかし、これもライプニッツ係数を使うという結論になっているので、争うのはムダです。
幼児の養育費
幼児の被害者は、事故死しなければ確かに成人してから収入を得てくれるかもしれません。
しかし、子供の間は養育費がかかります。
死亡することによって養育費はかからなくなったのだから、その分は逸失利益から差し引くべきではないか、という疑問が生じえます。
しかし、幼児の養育費は死亡逸失利益から控除しない、という結論になっています。
扶養利益喪失等
妻や同居の子以外の人が被害者から扶養を受けている場合があります。
内縁の妻・夫とか、別れた相手の子供とかです。
その人たちは被害者の死によって扶養してもらっていた利益を失います。
その損失の請求が認められる場合があります。
長年別居していた正妻より、内縁の妻の言い分を聞いてくれた判決もあるので、あきらめずに頑張りましょう。