同乗者の過失の取り扱い
バスやタクシーのようにお金を取らずに、家族・友人・知人・他人を同乗させるのが無償同乗(好意同乗)です。
無償同乗者に対して損害額の減額が問題になることがあります。
事例は主に「赤本(※)」から抜粋しているので、正確な情報が必要な場合は原本を参照してください。
※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」 弁護士が賠償請求額を決める時に使うバイブル
無償同乗で減額が問題になる場合
無償同乗自体を理由として減額することはありません。
当たり前だと思いますが、赤本にわざわざ判例が載っているところを見ると、過去に争点になったことがあるようです。
しかし、同乗者が運転者の危険な行為を黙認していたり、煽り立てていた場合は減額が検討されます。
これはケースによっていろいろな判断があるようです。
減額を認めなかった例
- ヘルメットなしで原付の後ろに乗った人が死亡。警官の停止命令無視、スピード超過、信号無視の末の事故。しかし、同乗者がそれを煽ったり承認した証拠はないとして、ヘルメット着用違反のみを問うて1割の過失相殺にとどめた。
- 初対面の人の車に乗せてもらったところ、運転者がドリフト走行に失敗して海中に転落し二人とも死亡。同乗者はまさか本当にドリフト走行をやるとは想定しなかったはずとして減額を否定した。
減額を認めた例
- 運転者の飲酒を承知で同乗し、カラオケレストランへ。飲酒後に事故。20%減額。
- 加害者の運転が乱暴であることを知っており、一緒に飲酒した後に同乗して事故。1割減額。
- 改造自動車がコンクリート擁壁に激突して死亡。同乗者は運転者が無免許と知っていたと推認されることなどから4割減額。
- 飲酒運転でカーブを曲がり切れずに事故となり、同乗者が死亡。同乗者は運転者とともに飲酒した責任があるが、事故を誘発したというほどひどくないとして1割減額にとどめた。
シートベルト不装着が問題となる場合
シートベルトをつけていないために被害が拡大したとして、減額が求められる場合があります。
助手席の不着用については10%減額を認めたが、後部座席での着用はまだまだ一般的でないとして減額を認めなかった判例などが出ていました。
しかし、バスでも着用を認める時代ですから、今後は減額対象になるケースも増えるのではないかと思います。
できるだけシートベルトをつけること。
そして万が一、不装着で事故に遭った場合は、弁護士に判例をよく調べてもらって、減額しないよう訴えてみることです。