被害者に過失あれば保険金低減
過失相殺とは、被害者にも過失があった場合に損害額を割り引くルールです。
例えば赤信号で横断していた歩行者が事故に遭った時、加害車両の運転者が全責任を負うのは公正ではありません。
被害者の損害額は低減されるべきです。
どんな場合にどんな方法で低減されるのかが細かく定められています。
ここではその概要を説明します。
事例は主に「赤本(※)」から抜粋しているので、正確な情報が必要な場合は原本を参照してください。
※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」 弁護士が賠償請求額を決める時に使うバイブル
過失相殺のしくみ
基本的な計算
例えば、被害者の損害総額が1,000万円だったとしましょう。
被害者に過失がなければ、満額受け取れますが、20%の過失があった場合は次の計算になります。
1,000万円×(1-0.2)=800万円
この「過失」の判定は一般人が考えるそれとは違い、かなりシビアです。
たいてい何らかの過失が問われて、過失0%とされるケースはごく限られています。
素人考えで「自分は何も過失はないから、保険金は大丈夫。」などと思っていると当てがはずれます。
双方の損害の相殺
さて、交通事故で一方だけが損害を被ることは稀で、たいてい双方に損害が発生します。
例えば、Aさんの車とBさんの車が衝突事故を起こした場合、Aさんの損害についてはAさんが被害者でBさんが加害者と考えます。
同様に、Bさんの損害についてはBさんが被害者でAさんが加害者と考えます。
Aさん |
Bさん |
|
---|---|---|
損害額 |
400万円 |
200万円 |
過失割合 |
30% |
70% |
減額後の損害額 |
280万円 |
60万円 |
最終的な清算 |
Bさんから220万円受取 |
Aさんに220万円支払 |
この例だと、Bさんは損害が発生しているのに一方的に支払うだけになっています。
実際は交通事故保険金は任意保険と自賠責保険の2層構造で、人身損害については故意の場合を除いて自賠責保険から何らかの額が支払われます。
だからBさんや同乗者がケガをしていた場合に、支払うだけで受取がゼロというようなことはありません。
その辺を厳密にシミュレートすると複雑になるので省略しますが、要は過失割合が大きいと保険金は大幅に減るということです。
過失割合の決め方
過失相殺の計算方法はわかったとして、20%とか30%とかいう過失割合はどうやって決めるのでしょうか。
それは、事故の類型があらかじめ整理され、その中で過失割合が決められており、実際の事故に一番近い類型を選んで微調整するという方法によっています。
まず、事故類型は大きく4つに分けられます。
- 歩行者と自動車の事故
- 四輪車同士の事故
- 単車と4輪車の事故
- 自転車と自動車の事故
そしてそれぞれがさらに細分化されています。
例えば、「歩行者と自動車の事故」は「前進する自動車との事故」と「後退する自動車との事故」に2分されます。
「前進する自動車との事故」は道路横断の場合とそうでない場合に分けられ、道路横断の場合は横断歩道上だったか、そうでなかったかに分けられます。
こういう具合に、事故状況のモデルが細分化されて、こういう場合の過失割合は歩行者30%:自動車70%という具合に決められているのです。
過失割合のバイブル
事故の類型や基本的な過失割合は、判例タイムズという法律家の専門誌にまとめられています。
これは、交通事故を扱う法律事務所ならどこでも備えている過失相殺のバイブルです。
同様の情報は赤本にも収録されています。
過失割合は保険金額を大きく左右するファクターなので、担当弁護士にしっかり調べて交渉してもらいましょう。