【5.通院交通費・宿泊費等|交通事故の積極損害】

基本は公共交通機関

通院の交通費は損害と認められますが、基本は電車・バスなどの公共交通機関です。

 

自家用車の場合は実費相当額のみ。

 

タクシーは症状が重いといった事情がないと認められません。

 

なお、近親者が看護のために通う交通費も、被害者本人の損害として認めらます。

 

この損害費目に関する注意点をまとめました。

 

事例は主に「赤本(※)」から抜粋しているので、正確な情報が必要な場合は原本を参照してください。

 

※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」 弁護士が賠償請求額を決める時に使うバイブル

 

タクシーを認めた事例

タクシーの使用が認められるには、それを使うしかない事情が必要です。

 

下記のような判例が出ていました。

 

  • 自宅から駅まで徒歩で1時間かかるので、やむを得なかったと認められた。
  • 疼痛のため、車を安全に運転できない獣医に対して、通院のみならず通勤のタクシーが損害と認められた。
  • 膝の負傷により、医師から公共交通機関の利用を避けるよう指示されていたために認められたケース。

 

自家用車の実費を認めた事例

駐車場代、ガソリン代、高速代が認められた事例が出ていました。

 

実家が公共交通機関の乏しい僻地だった場合などに可能性があるでしょう。

 

宿泊費を認めた事例

宿泊費も必要性が明らかなら、認められた事例があります。

 

  • 重度の脳障害(コルサコフ症候群 1級)の息子の付添のために、母親の16日分のホテル代と5か月分の借家家賃などが認められた例。
  • 北海道の同じ病院で治療を受ける必要があったため、東京在住の妻が付添のために使ったホテル代が認められた例。
  • 重度の脳障害の息子の付添のために借りた家の家賃が、自宅から病院が非常に遠いために認められた例。
  • 外形醜状の若い女性の付添のために、母親の宿泊費が認められた例。
  • 付添のために毎日自宅と病院を往復する負担は大きすぎるとし、ホテル代と比較して高くないためにアパート代が認められた例。
  • 退院後に通勤の負担が重いため、職場のそばに宿泊したのが、休業を避けるために必要だったとして認められた例。

 

付添人交通費

付添人の交通費も本人の損害として認められます。

 

  • 1840日入院した女子小学生について、父・母・叔母・祖母の交通費477万円を認めた例。
  • 独身の被害者につき、北海道から姉が6回来て付き添った交通費が認められた例。
  • 付添の妻の高速代・駐車場代・ガソリン代が認められた例。

 

見舞いのための交通費

付添ではなく、見舞いであっても、症状が重い等の事情があれば、認められることがあります。

 

  • 頭蓋骨骨折の男子高校生。120回以上見舞いに来た両親の高速代とガソリン代が40日分認められた例。
  • 225日入院した医大生につき、父母・妹の航空券代・タクシー代が認められた例。
  • 死亡した男児につき、祖父母4名の駆け付け費用として飛行機代が認められた例。
  • 脳挫傷等で266日入院した母親に対し、息子の見舞が週1回を大きく超える頻度だったにもかかわらず、親の症状を思えば理解できるとして、交通費を認めた例。

 

治療中の通勤交通費

退院して職場復帰する過程での交通費も認められることがあります。

 

  • 職場復帰のために松葉づえとタクシーで通勤した交通費が認められた例。
  • 頸部痛や眼精疲労の女医。事故前は一般道を通行していたが、長時間の運転ができないために高速代が認められた例。
  • 車椅子や松葉づえで移動するしかなかった期間に、通院や通勤に使ったタクシー代を認めた例。
  • タクシー通勤で体の負担を抑えたことが休業を減らすことにつながり、損害拡大防止義務にもかなうとして、タクシー代が認められた例。

 

将来の通院交通費

過去に実際に発生した交通費だけでなく、将来の交通費も認められることがあります。

 

終生治療を要する被害者の平均余命年数分の通院交通費を認めた例が複数載っていました。