【2.家事従事者の休業損害|交通事故の消極損害】

「賃金センサス」の女子平均賃金で計算

このページでは、家事従事者の休業損害について説明します。

 

主婦だって仕事をしているし、ケガで家事ができなくなれば、家族は困るわけです。

 

それなのに、外からの収入がないというだけで、休業損害は認められないのでしょうか?

 

いえいえ、主婦(主夫)や休業損害は請求できます。

 

計算には「賃金センサス」という統計資料に出ている、女子の平均賃金が用いられます。

 

兼業主婦の場合は、それと仕事の収入のうち、高い方が採用されます。

 

この損害費目に関する注意点をまとめました。

 

事例は主に「赤本(※)」から抜粋しているので、正確な情報が必要な場合は原本を参照してください。

 

※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」 弁護士が賠償請求額を決める時に使うバイブル

 

専業主婦の場合

専業主婦の休業損害の計算には、「賃金センサス」(略称 賃セ)という統計資料の賃金データが用いられます。

 

これは厚生労働省が行っている「賃金構造基本統計調査」をまとめた資料です。

 

第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額が基礎。

 

受傷のため、家事に従事できなかった期間について認められます。

 

  • 事故により家事ができなかった期間について、家政婦費用を認めた例。
  • 事故前から障害のある主婦について、賃セの額の2割を基礎額とした例。
  • 妊娠中の専業主婦について、出産のための入院期間8日以外の休業損害を全部認めた例。
  • 事故で夫が死亡した主婦。事故後は自分のためだけに家事を行う立場となり、休業損害が認められないのが原則だが、例外的に認められた例。
  • 事故による傷害だけでなく、抑うつ感など精神症状による労働力低下も認めて休業損害を計算した例。
  • 実弟と引きこもりの息子のために家事をしていた主婦について認めた例。

 

兼業主婦の場合

パートタイマー、内職等の兼業主婦については、現実の収入額と賃セデータのいずれか高い方が採用されます。

 

正社員、専門職等で本格的な仕事をしている兼業主婦は有職者の扱いになります。

 

  • 育児休暇中に事故に遭った会社員の主婦。育児休業中は賃セを使用し、復帰予定日から実際に復帰した日までの期間は、前年の年収を基礎とした例。
  • 英語教室開設の主婦。事故後再開するも、生徒数が減って運営会社に契約を打ち切られ、閉鎖。症状固定まで約4年もの休業損害が認められた例。
  • 事故当時、内縁の夫の収入で暮らしていたパート勤務の女性。症状固定後に内縁を解消したが、事故当時は家事従事者と認められるとして、賃セが適用された例。

 

男性の家事従事者の場合

男性であっても、自分以外の家族のために家事に従事していれば、家事従事者としての休業損害を請求できます。

 

  • 妻と娘と同居の老人男性。入退院を繰り返していた妻に代わって家事をよくこなしていたので、家事従事者と認められた例。
  • 寝たきりの妻の介護を行っていた被害者男性。介護が家事労働と認められた例。
  • フルタイムで働く妻、および娘と同居していた障害者の男性が家事従事者と認められた例。